彼は、

パソコンを開くと、彼の顔が頭に浮かぶ。

 

彼は猫背で釣り目、三白眼気味の、本当に猫のような人だった。猫背を無理やりに伸ばすと、まるでモデルのようなスタイルで、いつも姿勢よくいなよ、と冗談交じりに言った事がある。それを聞いた彼は、えー?と言いながらも、努力をしてくれる人だった。10分後には戻っていたが。

 

彼は高校のクラスメートである。偶然にも、1年から3年まで全て同じクラスだった。

初めての情報の授業で、パソコンが苦手な自分に、丁寧に使い方を教えてくれたのが彼である。ありがとう、と言った時の、へにゃと笑った顔が、とても印象的だった。

 

彼は顔がいいのだが、基本的には重めの前髪で隠してしまっている。たまに黒縁の眼鏡をしているが、できればその綺麗な顔をもっと見たいな、と思っていた。

 

そんな彼が一度だけ、前髪をあげた事がある。1年の体育祭だ。

普段大人しかったので、運動が出来るというイメージはなかったのだが、彼は運動神経も抜群だった。花形種目で大活躍している姿を見て、ああ、彼は「出来る人」なんだなあ、とぼんやりと思った。

 

その後、彼の下には告白が殺到した。意外だったのが、クラスのカーストの上位の女子達も彼に告白していた事だ。彼女達は彼の事を詳しくは知らないと思っていたので。

ただ、彼は全ての告白を断ったらしい。かなり手酷く断られた人もいた様で、彼の立ち位置は以前と変わらなかったらしい。重い前髪と眼鏡に戻した事で、恋の熱を冷やしたようで、また、彼は教室の隅で静かに過ごすようになった。自分と話をしてくれるのも、変わらなかった。

 

自分は彼に告白しなかった。残念ながら、なのだろうか。彼は自分のクラスメート。教室で彼と話をする、たまに冗談も交わす、この関係を壊したくなかった。

 

結局、卒業まで自分と彼の関係は変わらなかった。彼は成績も良かったから、大学に進学すると思っていたのだが、進学はしないと聞いて驚いてしまった。

自分は彼に教わり、情報学に興味を持った所から、理系の大学に進学し、無事就職した。

 

なんでこんな話をしたかって?

彼の誕生日が今日だったことを、パソコンを開いた時に偶然思い出したからだ。

 

恋とは言えなかっただろう彼への気持ちは、今でもずっと、心の奥に埋めたままである。

 

作間龍斗誕生祭に寄せ、「ジャニーズに入らず普通の大学生をしていた彼」に「淡い感情を抱いていた”とある人”」の一人称視点で書いた小説、のようなものでした。実は小説部分は930文字です。狙いました、というか調整しました。

 

お誕生日おめでとうございます。忙しく活躍されているその姿を追うことができるということの喜びを噛みしめながら、今後も生きていきます。